2022年 10月 の投稿一覧

考察:乃木坂46 ドキュメンタリー映画第2弾 『いつのまにか、ここにいる』

0.はじめに

普段は乃木坂のライブ演出考察を専門としている本サイトであるが、まれにアイドルドキュメンタリーの考察も行っている
今回は2019年7月に公開された、乃木坂のドキュメンタリー2作品目『いつのまにか、ここにいる Documentary of 乃木坂46』見返したので考察していきたい

そして本作は2022年10月現在アマプラの見放題に入っているので、まだの人はこちらから是非見ていただきたい
後述するがメンバー、特に飛鳥ちゃんの魅力が分かりやすく伝わるので飛鳥ちゃん推しの人には特におすすめする
※以下、多少のネタバレを含みます

1.全体感

全体感としてはほかのアイドルドキュメンタリーと比べて、かなりテーマが複雑で見えにくいという印象がある
アイドルドキュメンタリーの定番といえば、メンバーの成長を描くものだろう
例えば以下の記事で考察した、先日まで公開されていた日向坂のドキュメンタリー『希望と絶望』はその色が濃い
・考察:日向坂46 ドキュメンタリー映画第2弾 『希望と絶望~その涙を誰も知らない』

ただこの映画冒頭でも触れられていたが、すでにトップアイドルになっている乃木坂46(時期的には2018年秋〜2019年春あたり)を題材としているのでそんなに単純なテーマにはできない
テーマが複雑に絡み合う中、私が強く感じたのは「トップアイドルの苦悩」「齋藤飛鳥の魅力」の2つであった
この点について深く考察していきたい

2.トップアイドルの苦悩①〜乃木坂46の自分と等身大の自分

トップアイドルの苦悩はいくつかの小項目に分類されるように思う
今回はその中でも強く感じた「乃木坂46の自分と等身大の自分」と「卒業」という項目を取り上げたい

一つ目として「乃木坂46の自分と等身大の自分」といつ項目を考察していく
さらに複雑なのはメンバーが多く世代がバラバラならグループゆえ、この項目への反応も一律ではない

まず分かりやすいのは3期・4期の描かれ方である
彼女たち若い世代は「乃木坂の自分」と「等身大の自分」が一致した存在として描かれている
「素のじぶんでアイドルをしていると語る」桃子ちゃんの発言や、一つのミスで自らを全否定してしまうせいらちゃんが具体例である
ドキュメンタリーにもあったが、存在ごとぶつかっていけばズタズタに傷ついてしまうという意味で苦悩は大きい

一方で1期生は少し異なる描かれ方をしていた
どちらかというと「乃木坂の自分」と「等身大の自分」を切り離して考えているようだった
印象的だったのは乃木坂として見られている自分を俯瞰的に語るなあちゃんや、過去の自分をさも他人事のように話す飛鳥ちゃんであった
このメンタリティであれば、仮に「乃木坂の自分」を否定されていても「等身大の自分」とは異なるものとしてメタ認知しているのでズタズタに傷つくことはないだろう

ただ彼女たちは苦悩と無縁かと言われるとそうではなく、「乃木坂の自分」と「等身大の自分」の捻じれに起因する歪みの影響を受けていた
例えばなあちゃんは常に乃木坂の自分として見られていると語り、それ以外の自分は何もないとまで語っていた
飛鳥ちゃんは乃木坂の自分がおさまったキャラクターが好きではないと語っていた
全否定した過去の自分と対面を果たす成人式参加は、等身大の自分との擦り合わせをしようとしていたのではないか
おそらくこの歪みとその向き合い方こそがこの映画の主題であろう
エンディングテーマである『僕のこと、知ってる?』の歌詞ともこのテーマは共通しているように思う

ではこの歪みの解決策はあるのだろうか?
当時は明確には気づかなかったか、今の僕は答えに近いものを見たことがある
それは『僕のこと、知ってる?』と共通テーマを歌った『他人のそら似』の歌詞の中で描かれているように思う
本当の自分や相手が誰かわからなくても「君は君だよ」と認めあえたら…
問題が全解決したわけではなくても、ずっと気持ちが軽くなるのではないか

3.トップアイドルの苦悩②〜卒業

この時期はメンバーの卒業が相次いだ時期でもあり、卒業も苦悩の一つとして描かれていたように思う
これも卒業する側と見送る側で少し見える景色が違う

卒業する側の難しさはなあちゃんの卒業を通じて詳しく書かれていたように思う
先述の通りなあちゃんは乃木坂としての自分がいつからか全てであったように語っていた
そのねじれを解消するのが卒業という選択だったのかもしれない
実際にドキュメンタリーでは自分の脚で立ちたいと願うことが卒業なのではと描かれている

一方で見送る側の心情も単なる寂しさを超えたものがあると感じている
ドキュメンタリーの一章で描かれた「仲の良さ」、それは乃木坂で活動するメンバーのモチベーションの大きな部分を占めていた
例えばれいかちゃんが「(在籍している理由は)思い出がほとんど」、いくちゃんが「メンバーの待っているよという言葉が全て」と語るように、仲が良いメンバーと苦楽をともにできるというのがこの時期の一期生のモチベーションの大部分を占めていた

そしてここは「等身大の自分」問題とリンクしているように私には見える
「等身大の自分」がわからなくても「君は君だよ」と認め合える存在が、もし遠くへ行ってしまったら…
それ故にメンバーの卒業は寂しさというレベルではなく、苦悩に近いレベルのものだったのかもしれない

4.齋藤飛鳥について

この映画の主人公は誰か?
なあちゃんにもスポットは当たっていたが、誰か1人を選ぶならこのドキュメンタリーで存分に魅力を描かれていた飛鳥ちゃんだろう

それではここで言う飛鳥ちゃんの魅力とは何か?
一言でいうとそつなくこなしてるふうに見えるが、裏では不器用で優しいところだろう

  • 成人式のシーンに代表されるように、決別したはずの過去の自分を割り切ることができず、もう一度向き合おうとする不器用なところ
  • 懐いてくる桃子をはじめ、メンバーに対して素直になれないところ

ちなみにこのときの桃子への素直な思いは下記ライブで詳しく述べられている
・2021/08/22 真夏の全国ツアー2021 福岡公演Day2~大園桃子卒業セレモニー

クールに乃木坂を引っ張る飛鳥ちゃんも好きだけど、深いところで優しくてちょっと不器用な飛鳥ちゃんだからファンは支えたいと思うのだ

そして飛鳥ちゃんの魅力を存分に詰め込んだ描き方はらかなり意図されたものなのではないか
背景的にも長年エースとして引っ張ってきたなぁちゃんが卒業し、飛鳥ちゃんを中心として固め直す必要がある時期であった
(実際この時期に発売された『Sing Out!』でも飛鳥ちゃんはセンターを務めている)
そしてドキュメンタリー冒頭とラストに差し込まれた「飛鳥」をイメージさせる飛び回る鳥の映像が何よりの証拠だろう

このドキュメンタリーを見て、改めて飛鳥ちゃんが乃木坂のエースでいてくれてよかったと思った

考察:乃木坂46 30thSGアンダーライブ(アンダラ)大阪公演Day3 2022/10/5

1.全体の感想

「金を残すは三流、仕事を残すは二流、人を残すは一流」
政治家・後藤新平の言葉であり、あの野村克也さんの座右の銘としても有名である

その意味で和田まあやは間違えなく一流であった
アンダーライブを初期から作り上げ、メンバーの大半が入れ替わった今でもアンダーライブの熱さは全く失われていない
これはまあやがステージ上に舞台裏に3・4期生に、アンダーライブらしさを伝えていったからであろう

彼女の最後のライブは、ある意味いつも通りのアンダーライブだった
もちろんそれは凡庸なライブであったというわけではなく、いつも素晴らしいものを作り上げてきたという意味である
以下ではポイントを絞って振り返っていきたい

2.セットリスト

こちらのサイトをご参照ください
アンダー曲と懐かしの名曲で構成されていて、オタク心くすぐられるセットリストだとは思う
ただまあや最後のアンダーライブということを考慮すれば、オールアンダー曲構成でもありだったとすら思うのでそこまでマニアック路線に走ったなという印象はない

3.振り返りポイント

①アンダーライブのパフォーマンス

いつも通りといえばいつも通りなのだが、今回もアンダーライブらしい熱量マックスのパフォーマンスは見どころだった
(もちろんこれがいつも通りとなっていることがすごいのだが…)

中でも印象に残ったのは『日常』である
きいちゃんの代表曲でいまやすっかり全体ライブでも定番となった曲であるが、もともとはアンダー曲であった
今回は理々杏センターで披露されていたが、きいちゃんに負けずとも劣らないパフォーマンスができていたのではないか
今後は久保ちゃんセンターで披露されることが多そうなこの曲だが、アンダーはアンダー曲というプライドを持って披露し切磋琢磨してほしいとも思ったりした

②新4期生の躍動

今回のアンダーライブでは新4期の各面々がかなり仕上げてきたなと思った
前回まではやや硬さが残っていたが、スター誕生ライブ全国ツアーを経てかなり成長しているように思う

また前回シングルのアンダーから同じ4期の弓木・やんちゃんが選抜入りしたのも大きいだろう
目の前で仲間が選抜入りしたのならば、次は私もという気持ちが出てくるのは必然だろう

くろみんの鬼気迫る『音の出ないギター』のパフォーマンスは見どころの一つだった
BOØWYを参考にしようとしたというエピソードもさすがである笑

りかちゃんは前回までかっこいい系のダンスがあまり得意ではないのかなという印象だったが、今回はとにかく表情で殺せている
個人的には前回から一番成長したように見え、相当頑張ったんだろうなと伝わった

みゆちゃんも『狼に口笛を』でオオカミポーズをとるなど、ファンが求めていることを考えて実行しようというのがとても良かった
ブログ更新も熱心だし、努力が報われてほしいなと思う

そして林はスター誕生ライブの時から思ってはいたことだが、表現力が段違い
「この子が乃木坂選抜のセンターです」と言われても何ら不思議でないレベル
現実的に近いうちに実現するとしたらアンダーでだろうけど、次のシングルあたりで林センター見てみたい気がする

今が正念場と気合が入る4人の活躍にこれからも目が離せない

また余談だが、アンダー・選抜間の流動性が増すことでアンダーライブの性質は以前のものに戻っていくかもしれないなと思った
このあたりは以下前回のアンダーライブの記事に詳しく記載している
乃木坂46 29thSG アンダーライブDay3考察 2022/3/27

③和田まあやについて

もちろんまあやについてはさすがの一言であった
まずパフォーマンス的には『制服のマネキン』について触れたい
マネキンといえば生駒ちゃんの代名詞であり、誰がやっても生駒ちゃんほどの主人公感が出ないという感想になってしまいがちである
しかし今日のまあやは違った
アンダーを長年背負ってきた重みからくる圧倒的な主人公感で、生駒ちゃんにも引けを取らないパフォーマンスだった
『Under’s Love』もそうであったが技術はさることながら、魂で踊っている感じに心震えた

またスピーチも衝撃的であった
まさかあのとことん明るいまあやが、大病を患っていたとは…
(あとから調べると既出の話だったようだが、私は全く知らなかった)
そんなことみじんも感じさせず、底抜けに明るかったまあやは本当に尊敬に値する
そのスピーチの流れで『左胸の勇気』で「生きてればなんとかなる」なんて歌われたら泣いちゃうよ…

最後にまあやはほっておいても幸せになる星のもとに生まれている気がするが、それを超えるくらいの幸せが彼女のもとにありますように…
それくらい偉大な人だと思うんだ

④乃木坂っていいとこだな

今日のライブをみて改めて乃木坂っていいとこだなと思った

今の一期生年少組は若くして乃木坂に入り、乃木坂メンバーに囲まれてで育ってきている
それはまあやも例外でなく一期のお姉さんを見て育ってきたと言っている
ななみんに宿題を丁寧に教えてもらい、わからないときはまいやんに答えだけを教えてもらい(笑)、かずみんには100万円貸しても良いと思えるくらい人生で大切なものを教えてもらったとのことだ
そんな風に育ててもらう立場だったまあやがいつしか後輩を支えアンダーライブの魂を引き継ぎ、卒業時には後輩が号泣している…
こんなまっすぐで格好いいひとを育てた乃木坂というグループは改めていいグループだなと感じた